先輩からのメッセージ ー 修了生第5回 鬼頭 隆さん
夢見ていた理系と文系の橋渡しの仕事に従事
鬼頭 隆(きとう たかし)さん
1993年3月、千葉大学 法経学部経済学科卒業
1993年4月、株式会社情報通信総合研究所に入社。IT産業を中心とした市場調査・研究を担当
1997年4月、同社休職。大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻 新田研究室
1999年3月、同 修士課程修了
2000年12月、ノキア・ジャパン株式会社。以降、カスタマー・ケアの分野を中心に活躍中
カスタマーケアという分野
私は「カスタマーケア」、いわゆるアフターサービスの部門で、製品の修理やサポートに必要な機能やシステムの検討・企画を担当しています。製品の企画段階から開発、製造、流通そしてアフターサービスまで網羅したひとつの流れに目を配るのが私の役目です。
そのため守備範囲も多岐にわたります。アフターサービスに関する製品共通の機能要件(Requirement)を決めるのも仕事のひとつ。例えば、ソフトウェアのアップデートやサポートに関係するアプリケーションを製品に搭載させる、などの要件を決定します。また製品そのものだけでなく、新しい技術やサービスに対応したアフターサービスの仕組みの検討・企画にも範囲は及びます。
また大きな視点で言えば、今後の新しい製品・サービスの計画やアフターサービスの戦略に沿った機能やシステムのロードマップ、すなわち長期のプランを練ることも挙げられます。深く且つ広い視野で管理をしていますので、必然的にカスタマーケア内外の関係するさまざま部署との横断的な仕事になっていきますね。
不思議な縁の連鎖
私は千葉大学法経学部を卒業し、一度民間の情報通信系シンクタンクに就職しました。
学部時代はEUの経済が主要なテーマでしたが、仕事では情報システム分野の市場調査・研究を担当し、お客様の期待に応えるためにも、一度きちんと理系の勉強をしたいと思い始めました。
東工大で修士課程を学ぶことになったきっかけは、不思議な縁からです。当時、徐々に仕事でも必要になったきた英語に苦労していた私は英語学校に通っていました。そこで東工大で助手を務めていたクラスメイトから東工大を薦められたのです。「まさか!」と最初は思いましたが、最初に訪ねた大岡山の先生から、当時すずかけ台に赴任間もない新田先生を紹介していただいたのです。
大学受験時代には工学部も受験してはいたものの、周りは理系の学部から進学してきた学生ばかりで、さすがに社会科学系出身かつ社会人の私にはハンデがありました。そこを新田先生に手取り足取り教えていただいたのは、幸運であり良き思い出です。新田先生は人工知能や認知科学の研究をされていますが、弁理士の資格もお持ちの方で、社会学系出身の異色な私をかわいがってくれました。休職制度をつくってくれた会社にも感謝していますし、今にして思えばラッキーの連続でしたね。
なんとか二年間の“修行”を乗り切り、会社に復帰しました。しかし時代の流れとともに会社が必要だと思っていることと、自分のやりたい分野にずれを感じるようになり、新しい機会を求めて現在の会社へ転職しました。
ロジカルに考えることが身についた修士時代
今の職場に移った大きなきっかけは、学生時代から惹かれていたヨーロッパや北欧の企業であることでした。また、新しい仕事として、製品・事業開発や消費者により近い分野を切望していました。ゆくゆくは理系文系関係なく、両方の橋渡しの仕事をしたかったの私には、めぐりめぐって希望の地でした。
「カスタマーケア」という分野は、お客様など人と向き合うソフトな面が分かっていないといけない反面、エンジニアが扱う技術的な面の理解も必須です。今私がこうしてエンジニアとも必要なコミュニケーションできるのは、東工大時代にソフトウェアを中心とした「ものの動く仕組み」をきちんと学んだおかげです。それぞれ分野で高い技術と知識を持つ様々な専門家・エンジニアと一緒に、より全体的・横断的な視点から問題を分析し、関係者との調整を進めながら解決策を示す現在の仕事には、プロセスを論理立てて進めることが必須です。知能システム科学時代に自ずと鍛えられたより緻密な論理的思考の基礎が、ここで役立っていることを痛切に感じています。
そして、フィンランドへ
現在私が勤務しているオフィスは東京ですが、ここでもグローバルな役割を担当するという機会に恵まれました。現在所属するチームのメンバーはヨーロッパ各地に点在し、東京には私だけ、また出身国も様々です。英語での仕事、年100日を越える海外出張などは、学生時代には全く想像もつかなかった環境です。そして、この春から家族とフィンランドに移る予定です。社会システムが全く違う国ですが、学生時代から憧れていたヨーロッパ・北欧の地、大きな不安と期待の両方でいっぱいです。
知識欲も益々旺盛、これからも新しい分野、例えば機会があればMBAのような分野も勉強していきたいですね。