先輩からのメッセージ

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先輩からのメッセージ - 修了生第1回 南野朋之さん

知能システム科学専攻を修了し活躍している先輩からのメッセージや現在,在学中の先輩からのメッセージをお届けします.

好きなことで,たくさんの人の役に立つ

南野朋之さん 南野 朋之(なんの ともゆき)さん
1997年 東京工業大学第5類入学
2006年 大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻博士課程修了
同年 4月 グーグル株式会社に入社
大学院時代は精密工学研究所 知能化工学部門 奥村研究室に所属。Webマイニング、自然言語処理に関わる研究に従事。大学院時代に未踏ソフトウエア創造事業に参加。
現在は,Google マップの写真表示プロジェクトなどで活躍中。

大学時代のプロジェクトがターニングポイントに

大学入学の頃から、漠然と「インターネットにからんだものをやってみたい」と、思っていました。ただ、学部生時代はいわゆる「普通の大学生」でした。バイトも遊びも一生懸命、という感じだったんですね。
転機になったのは、博士課程1年の時に参加した「未踏ソフトウエア創造事業」で、ブログのサーチエンジン「blog Watcher」を作ったときです。
相当忙しかったんですけれども、1年間で作って公開しました。
このプロジェクトは論文を書くだけではなくて、実際にサービスやメンテナンスもやって、ユーザーに使っていただくところまで行います。とても大変でしたが、ソフトウエアを作って公開することを通じて多くのことを学びました。
いろいろな人から多くのヒントをもらったことや、興味を持った会社の方が研究室に遊びに来てくださって、どんな需要があるとか、こういうことができないか、といった話ができることは、すごく楽しかったです。
このときの「たくさんの人に使ってもらえるものを作る」という体験が、後々グーグルで働きたい、と思ったことにつながっていると思います。

好きなことで、人の役に立つ

研究室で指導してくださった奥村先生は、何かにつけて「人の役に立つことの価値」を話してくださる先生でした。研究を突き詰めてやると、どういうよいことがあるのか、どう人の生活が変わるのか、どういう社会的な意味があるのか、ということ……つまり、「研究のための研究であってはいけない」ということが、大学で学んだ大切なことのひとつです。
自分の好きなことで、意味のあることをやらなくてはならない。人の役に立つものを作らなくてはならない。そういうことを、常に考えるチャンスがありました。。
実際、「興味があること」を見つけるのは、すごく大変なんです。研究の8割くらいは、「研究の対象を見」というところに苦労するんですね。見つかってしまえば、後は自分の好きなことなので、突き進むだけです。。
僕も、修士の時の研究テーマを決めるのには、時間がかかりました。。
先生から「これをやってみたら」なんて言われないわけですよ。「自分がやりたいことを探しなさい、それも研究のひとつだ」と。研究者であるためには、自分でテーマを見つけられないとだめで、与えられたものだけやっていればいいわけではないのです。それが、先生や東工大の方針のひとつでもあると思うんですね。。

リサーチからエンジニアリング、フィードバックまで

現在、グーグルでは「エンジニア」として働いていますが、学生の時は、エンジニアよりもリサーチャー(研究者)になりたいと思っていました。
でも、グーグルで「エンジニア」というのは、「リサーチャーだけじゃないよ」という意味があります。ある機能をつける際、「どうやってやるか」というのは自明ではありませんから、リサーチ的な部分というのは必ずあるわけです。そしてアイディアを実現して、なおかつ世界中のユーザーが同時に来ても大丈夫な方法を考えるエンジニアリング部分も行うし、その後、フィードバックを得て改善して行く。
自分が関わるプロダクトのクオリティに対して、最初から最後まで全部責任を持つ、というのが、「グーグルのエンジニア」なんですね。自分が思っていた「リサーチャー」よりも、この会社の「エンジニア」の方が、やりたいこととしては近い。実際に自分が作ったものが世の中に出て、たくさんの人に使ってもらえますから。
好きなことだったら、どれだけやっていてもつまらなくならない。楽しいですし、結局それが、自分の身に付くんですよね。

南野朋之さん 南野朋之さん