先輩からのメッセージ

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先輩からのメッセージ - 修了生第3回 見城 幸直さん

知能システム科学専攻を修了し活躍している先輩からのメッセージや現在,在学中の先輩からのメッセージをお届けします.

大きく視野を広げた、社会人との研究

見城幸直さん 見城 幸直(けんじょう ゆきなお)さん
1998年、群馬工業高等専門学校 電子情報工学科入学
2007年、東京工業大学 大学院総合理工学研究科 知能システム科学専攻修士課程修了。大学院時代は寺野研究室に所属。
2007年4月、ソニー株式会社に入社。ビデオカメラ関連の半導体開発などで活躍中。

アルゴリズムを考えることが好きで東工大へ

 群馬工業高等専門学校に5年間通い、大学院進学のためにさらに2年間、同じ学校の専攻科で勉強しました。最初の5年間は電子情報工学科で、コンピュータのハードウエアとソフトウエアを専門にしていました。普通の大学だと、一般教養を先に勉強して、後から専門の勉強をしますが、高専は先に専門的なことを勉強します。
 もともと、数学の問題や、パズルを解くような作業??アルゴリズムを考えることが好きでした。それは、今も変わっていません。
 東工大の大学院にしたのは、自分が考える中でもっとも挑戦的な学校だからです。高専の時も授業で人工知能を勉強してはいたのですが、東工大は古くからの伝統的な人工知能の研究だけではなくて、柔軟性があり、新しい研究をしています。研究室を見学に行った時の、すずかけ台1)の環境も印象がよかったです。とても落ち着きました。

「組織」をテーマに、社会シミュレーションに挑戦

 大学院では寺野研究室に所属していました。入学してすぐ、「社会人と共同研究をしてみないか」と寺野先生からお話がありました。プログラミングは、高専の5年間で修行を積んで結構得意だったので、このお話しが来たのかもしれません。
 最初は、共同研究のテーマが決まっていませんでした。テーマについて会議を繰り返すうちに、「社会人で、一般のマネージャーが知りたいのは、部下の不満やモチベーションなど、普通のマネージメントではわからないようなことではないか」という話になりました。マネージャーの立場で組織を考える時に、コンピュータでどうにか補助できないかと……。これがきっかけで、「組織の活動をシミュレーションする研究」に取り組むことになりました。
 物理シミュレーションだったら、最初に正しいとされている式があって、それ通りに作ればほぼ正しいものができます。でも、こういった「組織の活動」などの社会シミュレーションは、生の、人間の心理を扱うので、シミュレーションとしては新しくもありますが、一方、不確実で、デリケートなものです。それまで、純粋に工学系だけを勉強してきたので、最初は少し抵抗がありましたが、とにかく新しいことに挑戦したいと思い、取り組んでいきました。

社会人とともに意見を交わし、研究する

 寺野研究室では、先生を中心に、普段仕事をされている方が、毎週土曜日に田町2)に集まってゼミを開きます。研究所や商社、銀行関係の方、官僚の方……人生経験の豊かな方がたくさん来ます。実際にマネージャーとして仕事をしている方も多いです。
 寺野先生はかつて社会人として研究をされた経験があり、多くの方から慕われています。さまざまなジャンルの社会人が参加するゼミに、学生として参加できたことは、「寺野研究室でよかった」と一番思っている点です。
 社会人のみなさんの研究内容を聞かせていただいたり、自分の研究内容を発表したりというのを通じて、社会シミュレーションの研究に進んでいった、と思います。
 みなさんは、自分の発表を毎回楽しく聞いてくれていましたし、たくさんのアドバイスもいただきました。修士の最後で、階層組織モデルの研究3)に、自分がもともと好きな工学的な要素を取り入れた時は、笑って温かく見てくれていたのかなと思います。
 高専で、勉強だけの狭い世界にいた自分が、大学院で外の社会とつながりました。社会人とやりとりして、みんなで研究していくという経験は、プレッシャーにもなったし、プラスにもなったと思います。
 そして今でも、土曜日の田町のゼミに行っています。今度は社会人としてゼミに参加しています。やはり、勉強は続けていたいですね。(談)

1) 東京工業大学 すずかけ台キャンパス
2) 東京工業大学 田町キャンパス
3) 「強化学習エージェントによる企業組織の分析モデル(セッション2:社会システムのモデル化)」 情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] 2007(26),35-42,20070314(ISSN 09196072) (情報処理学会/社団法人情報処理学会) http://ci.nii.ac.jp/naid/110006277157/#abst

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